スーツを着た悪魔【完結】
胸の奥の心臓が、きゅうっとしめつけられる。
足元がグラグラして、倒れないよう気を張るのが精一杯だった。
「お兄ちゃんは優秀だから、自分で何かはじめるのかもしれないし、あんたが心配する必要なんかないわよ」
一方、話をさえぎられたメミは大きくため息をついたあと、深青にとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ごめんなさい、どちらかというと私たち兄妹が面倒を見てるのに、まゆったらいつも頓珍漢な心配ばかりしていて……。それであの、もしよかったらこのあと――」
まゆがいるにもかかわらず、メミは自分が一番きれいに見える角度と笑顔で、堂々と深青を誘おうとしたのが
「まゆ」
深青はそんなメミからすっと視線を外し、どこか緊張したまゆの頬を指の背で撫でた。
「そんなに心配しなくてもいい」
「深青……」
不安に揺れるまゆは、深青の顔を仰ぎ見て、涙をこらえるように唇をかみしめる。