スーツを着た悪魔【完結】

「あ……で、でも、お兄ちゃんは誰も病室に入れないから……無理じゃない?」

「――そう、なの?」



一瞬戸惑ったまゆだったが、

「とりあえずノックしてみろ」

と深青に言われ、軽く深呼吸をしたあと、震える手でドアをノックした。



「――まゆです」



一呼吸して『どうぞ』という悠馬の声が帰ってくる。

思わず力が抜けそうになった。



「大丈夫みたい」

「ああ、そうだな。あいつも待っていたんだろう」



よかった。話が出来る。


まゆは背中を支える深青の体温に支えられ、ドアノブを回した。


そして二人はそのまま病室の中へと吸い込まれていく――。



「どうして……」



そして廊下に一人残されたメミは呆然としながら呟いていた。


< 535 / 569 >

この作品をシェア

pagetop