スーツを着た悪魔【完結】
――――……
特別室は、病院というよりもまるでホテルの一室のように明るくきれいだった。
窓は大きく、外は木々が生い茂り、床は綺麗に磨き上げられている。病室特有の匂いも感じられない。
まゆは抱えた花束をぎゅっと胸に抱き寄せながら、広々とした病室の奥へと足を踏み入れる。
部屋は横に長く、どうやら悠馬のベッドは左手奥にあるらしい。
ベッドが視界に入ったところで、立ち止まった。
「――まゆ」
「悠ちゃん……っ」
「よく来てくれたね」
悠馬はベッドに半身を起こし、本を読んでいた。
清潔感のあるパジャマにカーディガンを羽織ったその姿は、顔に大きな包帯さえなければ、いつもの穏やかな悠馬だ。
「顔、大丈夫なの……」
まゆは血の気が引いた顔で、問いかける。
「鼻が折れたよ。そこの彼はずいぶんな乱暴者だね」
「えっ!」
「整形手術で元通りになる」
深青がため息をつきながら、まゆの隣に立った。