スーツを着た悪魔【完結】
「なんならもっと男前にしてくれって頼んでやってもいいけど?」
「深青……!」
どうしてこの期に及んでそんな冗談を言うのだと、思わず隣の彼を振り仰いだまゆだったが――
彼の表情が硬いことに気付いて口ごもる。
そして悠馬を振り返ってみれば、彼もまた硬質な空気をまとっている。
しかしそれも当然だろう。深青と悠ちゃんの間に友好的な空気など出来るはずがない。
深青にしたら、顔も見たくないに決まっている。
だけど彼は私のためについてきてくれた……。
だから、私が頑張らなくてはいけない。
「悠ちゃん、話があるの。座っていい?」
「――ああ」
まゆは悠馬がうなずくのを確認して、ベッドの側に置いてあった椅子を抱えて、悠馬の隣に置く。トートバッグを床に置き、それから悠馬の顔をジッと見つめた。
「何から話したらいいのかな……色々考えてたんだけど……」