スーツを着た悪魔【完結】
「まゆ、僕はね、一番大事なのは自分なんだ」
言葉を選んで、考え込んでいるまゆを否定するように、悠馬は口火を切った。
「自分の気持ちが一番大事で、誰かのためにとか、考えたことは一度だってないし、誰かを慈しみたいとか、愛したいとかも、思ったことがない」
悠馬は、時折顔が痛むのか、口調はゆっくりだったが明瞭に言葉を続ける。
「まゆのことだって、身近にいる格好のおもちゃとしか思っていない。イトコじゃなかったらきっと、見向きもしなかった」
言葉の内容は耳を疑うような内容だったが、なぜか、包帯の隙間から見え隠れする悠馬の瞳は、まゆのよく知る穏やかな悠馬だった。
「こんなことになって、さすがの僕も後悔してるよ。度が過ぎた。たかがおもちゃを見知らぬ誰かに取られそうになったからって、ムキになるなんてね……この辺でいいだろ? もう話すことはない。二度と会うこともないよ。消えてくれ」
「悠ちゃん……」
淡々と話す悠馬の言葉に、まゆの心はきつく締め上げられた。