スーツを着た悪魔【完結】

決して謝罪の言葉が欲しくて来たわけではないのだけれど、彼にとって自分はその程度の存在だったと知ると、やはり切なかった。



やっぱり、何も言わないまま、このまま帰ったほうがいいのだろうか……。


まゆはうつむいて、涙をこらえていたのだが、そこで黙っていた深青が助け船を出す。



「おい、一つだけ聞く。あの夜、まゆになに飲ませた?」

「ああ……エスプレッソに混ぜた薬か。違法性のあるものじゃないから、気にしなくていいよ」

「未散は違うクスリの心配してたけど……本当は鎮痛剤だろ? 鎮痛剤にも、飲み方次第では妙に気分を高揚させたりするものがあるんだ」

「――」



深青の言葉に、悠馬は動揺したように口をつぐむ。

どうやらその反応から見るに、まゆが鎮痛剤を飲まされたというのは正しいらしい。


にしても、鎮痛剤……?

鎮痛剤って、痛み止めだよね?

どうして悠ちゃんはそんなものを持っていたの?




< 540 / 569 >

この作品をシェア

pagetop