スーツを着た悪魔【完結】
決して謝罪の言葉が欲しくて来たわけではないのだけれど、彼にとって自分はその程度の存在だったと知ると、やはり切なかった。
やっぱり、何も言わないまま、このまま帰ったほうがいいのだろうか……。
まゆはうつむいて、涙をこらえていたのだが、そこで黙っていた深青が助け船を出す。
「おい、一つだけ聞く。あの夜、まゆになに飲ませた?」
「ああ……エスプレッソに混ぜた薬か。違法性のあるものじゃないから、気にしなくていいよ」
「未散は違うクスリの心配してたけど……本当は鎮痛剤だろ? 鎮痛剤にも、飲み方次第では妙に気分を高揚させたりするものがあるんだ」
「――」
深青の言葉に、悠馬は動揺したように口をつぐむ。
どうやらその反応から見るに、まゆが鎮痛剤を飲まされたというのは正しいらしい。
にしても、鎮痛剤……?
鎮痛剤って、痛み止めだよね?
どうして悠ちゃんはそんなものを持っていたの?