スーツを着た悪魔【完結】
何も知らないまゆが深青を振り返り、そして悠馬へと視線を移す。
「悠ちゃん……?」
悠馬の包帯の奥の瞳が鋭さを増していく。
「お前……」
視線で人が殺せるのなら、間違いなく深青は重傷を負っているだろう。
けれど深青もそんな視線を受け止められる男だ。
「コンプライアンスはどうなってるんだ、なんて言うなよ? お前が意識を失っている間、調べるのは当然だし、結果分かったことだ。まゆには知る権利がある」
「深青……なに言って……まさか……」
家族の誰にも帰国を知らせなかった、悠ちゃん……。
ヘッドハンティングも嘘。私への執着も、何もかもが、急だった。
それって――
「どこか、悪いの……?」
ぽつりとつぶやいたまゆの言葉。
一瞬、シン、と静まり返る病室だったが……
「アハハッ……」
突然笑い出した悠馬の笑い声で、おかしな空気になった。