スーツを着た悪魔【完結】

「長年、お前を苦しめた罰が当たったのかもしれないね。ね、まゆ。僕なんか死んだほうがいいだろう?」



その瞬間、まゆはすべてを察した。


悠ちゃんは治す気なんかないんだ。

だからこんな無茶をしたんだ。

先を焦るように、駆け足で、私の前に、嵐のように現れた――



「罰なんか当たってない。ちゃんと治して、手術が受けられるなら、ちゃんと受けて!」



まゆは立ち上がり絶叫していた。



「死んだほうがいいなんて言わないで!」



そして床に置いていたトートバッグを持ち上げ、中身をベッドの上ににひっくり返す。

シーツの上や、膝にガサガサと物が散らばった。


深青もそれを見て眉をひそめ、身を乗り出した。



「まゆ、それは……?」

「私の宝物なの……」

「宝物?」



それまでぼんやりと天井を見ていた悠馬は、まゆたちのやり取りに、自分の膝の上に落ちたそれを見て、大きく目を見開く。



< 543 / 569 >

この作品をシェア

pagetop