スーツを着た悪魔【完結】
負けた……。
今、ここで完全に敗北を知った悠馬は薄く笑って、うなずいた。
「――結腸がんは治療効果が高い癌だ。進行していても、転移さえしていなければ手術で高確率で治るって言われてる。うちは癌専門じゃないけど、紹介状はいくらでも書いてやる」
深青はシーツの上のまゆの宝物を一つ一つ手に取りながら、バッグの中に仕舞っていく。
本当はなぐり殺してやりたいとまで思った男だが、まゆがそれを望まないのはよくわかっていた。
「まゆ、帰ろう」
「うん……」
深青はまゆの宝物を持ったバッグを持ち、もう一方の手でまゆの肩を抱き寄せる。
「悠ちゃん、またね。お花、ここに置いておくから」
「――」
部屋を出ていくまで、まゆは何度も悠馬を振り返ったが、悠馬は目を閉じ、そのままベッドに横になって顔を見せなかった。