スーツを着た悪魔【完結】
頼景が迎えに来てくれなければ、明日になっていたかもしれない。
「やっぱり、夜でもきれい!」
まゆははしゃいだ声で、バルコニーから外を見下ろす。
ここは高台にある周囲を別荘地の緑に囲まれた建物だ。明かりが灯った街並みと暗い海が眼下に広がって見える。
「どうしてここだったんだ?」
深青の問いかけに、まゆは風になびく髪を手のひらで押さえながら、振り返った。
「未散さんがね……」
「未散が?」
まさかろくでもないことを吹き込んだんじゃないだろうな……。
ひやりとしながら、まゆの背後に立ち、ウエストに手をまわす。
「家族五人と、頼景さん一家と、全員揃ってお泊りしたのがここだったって聞いたから」
「ああ……」
そう言われれば、そうかもしれない。
俺も頼景もまだ小学生で、一番下の未散はおそらくまだヨチヨチ歩きの幼児だったはずだ。