スーツを着た悪魔【完結】
軽く食事を済ませた後、別荘内のお風呂に入る。
何しろ伊豆なので、温泉にはことかかない。
二人はさっぱりしたあと、フルーツを食べ、ほんの一口だけお酒を飲み、ベッドルームへと向かったのだが……。
深青はひどく無口だった。
もちろん話しかければ笑顔にはなるのだが、次の瞬間にはまた真面目な表情になって、心ここに非ずといった雰囲気だ。
そんな深青を見て、まゆはかすかに不安を募らせていた。
もしかして、怒らせたんだろうか……。
さっき外だ、なんて言って、逃げるような真似をしたから?
でもそれは違う。
本当は、なんだか体が蕩けてしまいそうで、このままもっと触れてと、言いたくなった自分が怖かっただけなのに……。
「おやすみ、まゆ」
深青はにっこりと笑って、足元のフットライトだけつけっぱなしにし、いつものようにベッドの奥に入ろうとする。
「待って……!」
咄嗟にまゆは叫んでいた。