スーツを着た悪魔【完結】
「どうした?」
驚いたように深青の体が止まる。
「深青……私ね、」
どうしよう。心臓が口から飛び出そう。
今まで散々待たせておいて何だけれど、はいどうぞ、というタイミングが見つからなかった。
まゆは、ごくり、と息をのみ、それからベッドに腰を下ろしたままの深青の隣に座る。
そして、自分をきょとんと見つめる彼の手を取り、そのまま――
ワンピースタイプのパジャマの上からではあるが
自分の胸の下、傷口があるあたりに、その手を押し付けたのだ。
「――!」
まゆの精一杯のアプローチに、深青は雷に打たれたように背筋を伸ばす。
同時に、彼女にここまでさせた自分を殴りたい気分だった。
ずっと欲しいと言えなかった。
欲しくてたまらなかった分、いざそうなったら我を失うのではないかと、まゆを怖がらせたくなかった。