スーツを着た悪魔【完結】

「痛くないか……?」

「うん……」



まゆは首を横に振る。

痛くないと言えば嘘になるが、それよりもやっと深青と、愛する人と一つになった喜びのほうがずっと大きかった。


深青はまゆに体重をかけないように気を配りながら、シーツの上に散らばるまゆの髪をかきわけ、彼女の背中から、お尻へと手を滑らせる。



「まゆ……愛してる……」



そして上半身をかがめて、まゆの胸の間にある傷に舌を這わせる。

自然にまゆの目じりを涙が流れ、こめかみを伝って落ちる。



「こうやって触れられる存在で、よかった……」



深青の言葉に、受け入れたばかりで強張っていた体が、次第にほぐれ始める。



「――深青……」

「もっと、深く、抱いてもいい……?」



深青の問いかけにうなずき、自分の顎の下にある深青の、彼の首の後ろに腕をまわした瞬間、グッと深青が下から突き上げて体が浮いた。


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