スーツを着た悪魔【完結】
やがて二人の体を、心を、歓喜が包みこむ。
全身を満たす幸福感。
「まゆ……」
深青はのけぞり、細い悲鳴をあげて体を震わせるまゆの髪に両手を入れ、そのまま崩れるように倒れ込んだ。
が、次の瞬間、ハッとして体を起こす。
「ご、ごめ……」
「ううん、いいの……」
まゆはそのまま深青の上半身を抱き寄せる。
「まゆ……」
深青は戸惑いながらも、全身を預けないよう気を配りながら、まゆと抱き合った。
重い。これが深青の重み。
体にほのかに残る痛みは辛いけれど、それだけじゃない。
それは生きているということ。
耳を澄ませると、波の音が聴こえる。
美しくて、そして激しい夜だった。