スーツを着た悪魔【完結】
すっかり乱れたシーツの上でお互いの手足を絡ませ、向かい合って体を寄せる二人。
(ほんの直前まで、深青は、ようやく落ち着いて息を整えたまゆに「どこか痛くないか」とか「医者に見せなくていいか」と迫り、まゆが真っ赤になりながら「なんともないから!」と叫ぶまで体の点検を止めなかった。)
「ねえ……」
ぽつりとまゆが問いかける。
「部屋にあった写真、どこに隠したの? 彼女じゃないって言ってたけど、もしかして、昔の、恋人?」
「写真? ああ……若いころの母だ」
いきなり何を言い出すのかと、不思議に思った深青だったが、正直に答えた。
「いい写真だろ? Chanteでずっと広告として使ってたんだ」
「おかあ、さん……」
言われてみれば、深青も、未散さんにも、似ているような気がする。
ということは、まだお会いしたことはないけれど、深青のお母さんは未散さんクラスの美女というわけだ。
それに、男の子は母親に似ると言うし。美しくないはずがない。