スーツを着た悪魔【完結】
リストラされて、合コンで。
今日、澤田まゆ(21)はリストラにあい、勤めて一年の職場をあと一か月で辞めることになった。
あれこれ部長から説明を受けたけれど、要するに不景気で、それに伴うただの人員整理だ。
「元気だしてくださいよ、まゆさん」
ぼんやりしながら自分のデスクの上を片付けていると、隣に座っていた派遣のミカが声をかけてきた。
彼女もまた、まゆと同じくここでの仕事はあと一か月なのだけれど、彼女の場合次の派遣先に行かされるだけで、それほど苦悩に満ちた顔はしていない。
そんな彼女を常々「眩しいな……」と思っていたまゆは、澄んだ黒い瞳をパチパチさせつつも、気遣ってくれる彼女に対して感謝の気持ちを込めて、微笑む。
「……うん。ありがとう」
「じゃあ、合コン行きましょうよ」
「じゃあ? じゃあってなに?」
話を半分しか聞いていなかったせいか、思わず聞き返してしまった。
「うん、だからまゆさんに元気になってもらいたくて~」
「――いや、私は……」