スーツを着た悪魔【完結】
「まぁ、いい。さっき言ったのは嘘じゃない。お前を俺の会社で雇うよ」
「え……?」
今なんと?
まゆはクッションから顔をあげ、深青を振り返った。
けれど冗談ではないらしい。
さらりと深青は言葉を続けた。
「あの様子じゃ、未散は絶対に顔を出しに来るね。どうもお前のこと気にいったっぽいし……とりあえず建前上、アルバイトで。時給は――いくらだ。おまえ、手取りいくらだった?」
「じゅう、ごまん、ごせんえん……」
「嘘だろ? それで生活できるのか」
「で、できますよ……贅沢しなければ……」
深青は素で驚いていたが、まゆからしたら、きっと彼の着ているカジュアルな装いですら、全て払えないのではないだろうと、ため息をつきたい気分だった。
「じゃあ、とりあえずそれより出すから」
「そんなっ……勝手に決めないでくださいっ!」