スーツを着た悪魔【完結】
両腕に力を込めて、体を起こす。と、
「お前に拒否権はない」
と、取りつくしまもない。
「それに次の仕事、見つかったのか?」
「うっ……」
「こんなご時世だからな。リストラされてすぐに新しく仕事が見つかるとは思えないが?」
「そ、そうですけど……」
「とりあえず正社員の仕事が見つかるまで、アルバイトって名目で働けばいいだろ。ただ、それはあくまでも建前だから、うちで無理に働かなくていい。自由に仕事を探せ。で、見つかったらさっさと辞めていいから。その頃には別れたって未散に話せばいい。どうだ? 悪くない提案だと思うけどな」
「――」
アルバイトでお金をもらいながら、就職活動をして、正社員の仕事を見つける。
確かに悪くない、かもしれない。
これから先のこと、不安だったし。アルバイトでもなんでも、働けるならすぐに働きたい。
「でも……」