スーツを着た悪魔【完結】
今、こいつなんて言った?
驚いた深青は、そのままの体勢で「子ウサギ」を見下ろす。
「正直、すごくお金は欲しいです。生活していかなきゃいけないし……」
濡れたように輝く黒い瞳で、深青を見上げるまゆ。
さっきまでうじうじと半泣きだったはずの彼女の瞳は、驚くほど凛とした強さを持っていた。
「だけど、働かなくてお金をもらうなんて、変です。ですから……ちゃんと……働かせてください。お願いします!」
まゆはすっくと立ち上がり、そして両手をぎゅっと体の前でつかみ、深々と頭を下げた。
「――」
深青は言葉を失った。
何を言っていいかわからなかった。
『なに真面目になってるんだ、お前』と笑い、からかってやりたいのに、笑えなかった。