スーツを着た悪魔【完結】
「まゆちゃん!」
「は、はいっ!?」
突然名前を呼ばれて、驚いた。
心臓をドキドキさせながら顔をあげると、いつの間にか隣に男性がいて
「次、カラオケだってさ」
と、親切に教えてくれた。
「あ、そうなんですね、わかりました……」
促されるがまま、居酒屋を出てカラオケへと向かう。
途中、ミカにお金を渡そうとしたのだけれど「今日は100パーセントおごりです」と受け取ってもらえなかった。
「それよりも、まゆさん。どうもタイプの男いなかったみたいですね? 携帯の番号聞かれてたけど、なんだか乗り気じゃなさそうでしたよね?」
「え? いや、そんな……」
というか、そんな余裕がまるでなかったというか……緊張するというか……。
「二次会のカラオケに、とっておきの人が来ますよ」
「とっておき?」
「ええ。でもまゆさんにも譲らないですよ。ミカの獲物ですからね。フッフッフ……」
「も、もちろんよ……邪魔はしないから」
まさに獲物を狙う鷹の目をしたミカに圧倒されて、まゆはコクコクとうなずくしかなかった。
だけどとっておきって、いったいどんな人なんだろう?