塔の中の魔女
◇
エカテリーナは暫し考え込んだ。
椅子の床につかない足をプラブラと揺らし、青年を見つめる。
そんなことをすれば、大国の怒りがユダに向くのではないのか?
なぜ魔法使いの復活などと青年が口にするのか、エカテリーナにはわからなかった。
わからないけれど、青年がただならぬ決意を持って告げたのだということは、強い眼差しでわかる。
戦争――?
ふと、エカテリーナは恐ろしい予感に襲われた。
彼は再び戦争を引き起こそうとしているのではないだろうか?
従順な態度を見せながら、大国の首を掻く術を模索しているのかもしれない。
多くの民が苦しんでいるとその口で告げながら、
彼はその民を死に追いやろうとしているのかもしれないのだ。
「だ、駄目じゃ!」
エカテリーナは首を横に振る。
「ゼルダンは魔女狩りと称して、王女を処刑し続けてきたのであろう?
魔法使いなぞ、復活させれば多くの命が消えゆくだけじゃ」
エカテリーナがそう告げると、青年は笑った。