塔の中の魔女
「そうじゃない。
復活するのはエカテリーナ、おまえのことだ」
「わらわ?」
「五百年の幽閉を解き、王宮へお越し願う」
「なにゆえ……」
エカテリーナが眉を寄せると、彼は再びぶっきらぼうな物言いで告げた。
「おまえみたいなちびが五百年も幽閉なんて、
どんな罪を犯したのかしれないけど、とっくに時効だろ?」
「…………ゼルダンを相手に、戦争を引き起こそうと目論んでいるのではないのか」
エカテリーナが警戒心を露わに問いかける。
すると、青年は意外な言葉を聞いたというように目をきょとんとさせた。
「いや、戦争は無理だろ。
魔法使いの復活って、そう思ったのか。
……魔法使いの素質を見いだして、一から育成したとしても、何年かかるって話だ」
「ではなぜじゃ」
「お前が気に入ったから、かな。
こんな黴臭い塔にこのまま幽閉させておくのはもったいない。
ちびのくせに頭もいい。俺の側において知恵を借りたいと思った」
「ちびは余計じゃ」
朗らかな青年の言葉に、エカテリーナが頬を膨らませる。