塔の中の魔女
「来る!」
エカテリーナの叫びに、我に返ったようにロゼリンが塔から飛びだす。
もはや、自分が連れ出されることに抵抗しない。
ガラガラと崩壊していく塔が、白煙をあげている。
そして、その白い煙を払うように石扉から飛び出してくる無数の影。
自分たちを追って飛びだしてきたものから逃れるように、エカテリーナは顔を伏せる。
ロゼリンの足が、よろめいた。
足元が揺れているのだ。
「こんなときに、地震かよ!」
「こんなときだからじゃ!」
狼狽えるロゼリンを叱咤するエカテリーナの掌が、淡い光を集める。
手の中に杖を喚びだすと、駆けるロゼリンの肩越しから顔を出して、
突っ込んでくる黒いうねりに魔力を放った。
「マギ・デル・イ・セラ(風よ、刃となりて敵を切り裂け)!」
エカテリーナが生み出した風の鎌は、鎌鼬となって後方の竜のうねりを分断する。