塔の中の魔女
だが散っていった黒い影は、
キイキイと小さな鳴き声をあげながら、すぐに形を取り戻した。
巨大な黒い竜の腹が光りだす。
「反射魔法……!」
エカテリーナが青ざめた。
竜の胴体から風の渦が生まれる。
しなるように長い胴体が風を弾いた。
先ほどエカテリーナが放ったのと同じ鎌鼬が、ふたりに向かう。
エカテリーナの白銀の髪が、強い風に真横に靡いた。
「マギ・プロテ(盾よ)!」
エカテリーナの編み出した障壁が、鎌鼬を阻む。
風のぶつかる衝撃に、被っていた魔導師の尖り帽が地に落ちた。
「今の、なんだよ!?」
帽子を拾う余裕さえなく、揺れる大地を走り続けるロゼリンが訊いた。
渋い表情で、エカテリーナは不貞腐れるように口を開く。