塔の中の魔女
「反射魔法じゃ。
わらわの魔法がこちらへ跳ね返ってきた」
「なんで!?」
ロゼリンには背後を振り返る暇はない。
ただ、揺れる大地を転ばないように駆けるだけだ。
だから、突然の衝撃を息を詰めて、エカテリーナに説明を求めたのだろう。
しかし、エカテリーナにはゆっくりと説明している時間はなかった。
魔法のひとつひとつを説明していては、彼の脚が鈍ってしまう。
今は、あの大きな群れから逃れることがもっとも優先すべきなのだ。
やがて、ロゼリンが来たときに乗ってきた馬に辿り着くと、
乱暴に木に結んだ手綱を掴んだ。
するりとほどけたそれを巧みに引いて、
エカテリーナを抱えたまま、馬に飛び乗る。