塔の中の魔女
けぶる緋色の瞳が映し出すものは、荒廃した大地と、ところどころに生えた枯れた鈍色の細枝の木々。
しかし、どこまでも広がりを見せる大地の上には、まるで切り取って嵌め込んだ絵のように美しい青空が続いていた。
「これは、まさか――」
エカテリーナは信じられない思いで言葉を紡ぐ。
空を見あげ、周囲を見渡して、倒れているロゼリンの傍らにそれを見つけた。
地に突き刺さったロゼリンの剣。
研ぎ澄まされた刃が陽光を弾くように煌めき、エカテリーナの呆然とした表情を映し出している。
その緋色の瞳は剣先を食い入るように見つめていた。
「媒体を、斬ったのか……」
あの無数の群れの中から。
本体である、小さなたった一匹の蝙蝠を。
エカテリーナの目の前には、
心臓を正確に突き刺さした剣が、蝙蝠と地を縫いとめている。
いかに腕の立つ剣士といえど、エカテリーナの並みならぬ魔力を得た呪いに打ち勝つのは不可能なはずだった。