塔の中の魔女
エカテリーナはふとロゼリンを見おろす。
気を失う前に抱いた違和感を思い出して、問うた。
「……そなたは何者なのじゃ」
ロゼリンは目覚めない。
ただ静かに、沼地であったその場所に横たわるだけだった。
不意に頭上に影が落ちた。
警戒したエカテリーナが空を見あげると、
雲ひとつない青一色の世界から、優雅に馬が舞い降りてくるところだった。
エカテリーナとロゼリンを乗せて、塔からともに逃れてきた馬だ。
蹄の音もなく地に降りたその馬は、あるじを案じるようにロゼリンの元へ駆け寄って、鼻先を近づける。
泥のついたロゼリンの頬を舐める馬は、彼がまだ生きていることがわかると嬉しげに尾を揺らめかせた。
それを見て、エカテリーナはそろそろとロゼリンの服を掴む。
軽く揺すって呼びかけた。