塔の中の魔女
暁闇の王女
聖鐘―五百年前―
カラン。
カラ――ン。
カラ――ン……。
裁判の終わりを告げる聖鐘が響く。
エカテリーナは、じっと聖堂の椅子に座ったまま、
組み合わせた小さな手を胸元に当てて天井を見あげていた。
目の前には色硝子の嵌め込まれた陽光の差し込む天窓。
背の低い小さなエカテリーナには遥か彼方のように遠く高い天井には、
ユダの信仰の対象である純白の翼を生やした美しい天使たちが金の光を纏って空を舞っている姿が描かれていた。
総じて美しい天使たちは、聖堂の椅子に座る悩める者に救いを差しのべるかのように視線を下に向けて微笑みを浮かべているのだが、
今のエカテリーナには彼らのその表情は、罪を糾弾する酷薄な冷笑にしか見えなかった。