塔の中の魔女
軋む音を立てて、聖堂の扉が開かれる。
差し込む陽光に、上を見あげたままのエカテリーナの銀髪が美しい絹糸のような光を放った。
「――エカテリーナ」
堅い男の声に、エカテリーナは振り返った。
緋色の瞳が陽を受けて煌めく。
しかし、美しい少女は男の声音以上に堅くこわばった表情を浮かべている。
「エカテリーナ、こちらへ来なさい」
言われるままに、エカテリーナは椅子から降りて男に近づく。
逆光で男の表情は伺えない。
しかし、エカテリーナには彼が今、どのような表情を浮かべているか容易に想像できた。
こんなに堅い声で、
それでも自分を招く言葉は深い悲しみに満ちていて――。
「父さま……」
エカテリーナは、自分をそっと抱きしめる男の正装の厚絹の黒衣を掴む。