塔の中の魔女
恐れるようにそう問うてきた娘を聡明な子だとメイジェフ卿は思う。
あんな事故がなければ、ずっと宮殿で王族の側に仕えていられたはずなのに。
彼はエカテリーナの頭を優しく撫でた。
「安心なさい。
咎を受けるのはそなたのみ。
一族に類が及ぶことはない。
――王妃が庇ってくだされた」
「王妃さまが?
でも今回のことで、もっとも悲しまれているのは王妃さま」
「いいや、それは違う。
悲しんでおられるのは――――……」
父の声がよく聞こえない。
エカテリーナは、絶望のあまり自分の耳がおかしくなったのかと思い、聞き返した。
「父さま?」
「王妃さまはエカテリーナに申し訳ないと詫びていたよ」
エカテリーナは瞬く。
「どうしてですか?」