塔の中の魔女

恨まれるのならばわかる。

常に穏やかな心を持つ優しい王妃は、あの事故のあと、失意に臥せってしまったと聞いた。

憎まれても、罵られても不思議ではなかった。

エカテリーナはそれだけのことをしてしまったのだから。

けれど父は告げた。


「王妃さまが極刑を反対し、塔への幽閉を提案したのだ。
王族相談役のマジエフ家の家柄を考えても、穏便に済ませるのがいいだろうと」


エカテリーナが黙っていると、父は続けた。


「しかし、陛下は渋っておられた。
王家に関わりを持つ者が禁忌を犯したとして極刑を望まれたが、
最後まで王妃さまが反対なされた。
穏やかなあの方らしくもなく、審問員をも納得させる気迫で。
本来ならば王妃は審問会に出られるような体調ではなかっただろう。
それを押しての審問会への出席。
エカテリーナへの刑罰の軽減、説得は数時間にも及び、
審問員たちも最終的には殿下の言葉に折れざるをえなかった。
……そうして刑罰は塔への幽閉に決まった」
< 74 / 89 >

この作品をシェア

pagetop