夢の欠片
「あやは……お母さんはどうしてる?」


私は一瞬言葉に詰まった。


お父さんと別れてからのお母さんは、お世辞にも幸せとは言えない。


それを今は幸せに暮らしてる父に、話していいものかどうか悩む。


私が黙ってしまったことで、母が幸せではないと察したのか、父が私を気遣うように聞いてきた。


「お母さん……なんかあったのか?

だからひなもお父さんに会いに来てくれたのかな?

どうしたのか言ってごらん。

お父さんに出来ることなら何でも協力するから」


そう言ってくれただけで充分だった。


こんなに年月が経っているのに、私たち母娘を心配してくれているということだけで、満ち足りた気持ちになる。


「ありがとう……

でも大丈夫だから

それよりまた会いに来てもいい?」


私がそう言うと、父は少しだけ疑っているようだったけれど、諦めたのか悲しそうに笑って言った。


「ひながそう言うならもう聞かないけど…

どうしようもなくなったら言うんだぞ?

それから、ひなが会いに来てくれるのは、大歓迎だよ?」


お父さんに会えて良かった。


私が生きてる意味を少しだけ手に入れた気がして、私は父の家を後にした。



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