夢の欠片
「だけど……その頃、お母さんは付き合ってる人がいて、復縁を断られたんだよ

俺はひながいるのに、他の男と付き合ったりして大丈夫なのか心配だった

だからその男ときちんと話をさせてほしいって、あやにお願いしたんだ」


たぶんそれがあの人だ。


そう直感した。


お父さんとは呼べなくて、名前で呼んでた気がする。


遠い昔の記憶を呼び起こすのは思いの外、時間がかかった。


確か……たけるって呼んでた気がする。


父は健に会ってたんだ。


自分の知らないところで、そんなことがあったなんて、夢にも思わなかった。


「その人が思ったよりもすごくいい人で、ひなのこともすごく可愛がってくれてるみたいだった。

だからお父さんは復縁を諦めて、その人にお母さんとひなをお願いしたんだ」


お父さんは別れてから、私たちを放っておいたわけじゃなく、きちんと復縁を考えてくれてたんだとそれだけで嬉しくなる。


それに健が私を可愛がってくれてたのは、間違いじゃなかったんだということにも安堵した。


< 109 / 289 >

この作品をシェア

pagetop