夢の欠片
「でもその2年半後に、偶然お母さんを駅で見かけてね?

てっきり幸せに暮らしてるもんだと思ったのに、そうは見えなかったんだ

だから思わず声をかけてしまったんだけど……」


お母さんは、幸せそうじゃなかった?


あの頃、私は少なくとも幸せで、楽しかったって思ってたのに?


なのにお母さんは幸せそうじゃなかったなんて……


私は自分と母とのギャップに驚いた。


「それから何度か会うようになって……

よくよく事情を聞いてみたんだ

そしたらその相手の人はどうやら元々既婚者だったみたいで、俺との復縁を断るために付き合ってることにしてくれって頼んだらしいんだ」


――う……そ?


既婚者って……


結婚してたのに、なんで私たちと暮らすことになったの?


ちゃんと名字だって変わったはずなのに……


離婚して、母と再婚したってことなんだろうか?


私は淡々と話す父とは反対に動揺を隠せなかった。


そんな私の様子を察したのか、疑問に思っていることを、父がひとつひとつ答えていく。


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