夢の欠片
「彼の事情はよくわからないけど、その事があってから奥さんとうまくいかなくなったみたいで……

しばらくして奥さんは家を出たんだそうだ。

彼は元々奥さんをとても大切に思っていたみたいで、ショックのあまり酒に溺れてひどい状態だったらしい。

ところがそれを知った奥さんは、あやに手紙とマンションの合鍵を友達を使って渡してきて……

その手紙には、彼を頼むって書いてあったそうだ……」


私たち母娘があの人に関わらなければ……


そのまま幸せな結婚生活をしていたのかもしれない。


私たちが健の幸せを奪ってしまってたんだってことに、愕然とした。


「その手紙には、自分が頼んだことは絶対に言わないようにとも書かれてたって言ってた。

お母さんは、その時もうすでに奥さんには敵わないって思ったらしい……

でも自分のせいで家庭を壊してしまって、奥さんが戻るつもりがない以上、自分が彼を支えるしかないって決意したんだよ」


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