夢の欠片
あの幸せだった三年間の裏には、そんな大人の事情があったんだ。


なんで健と離れなきゃならないのか解らなくて、私は泣いて困らせたのを覚えてる。


お母さんは最初から自分には愛情がないってわかってて、健と結婚することを選んだんだ。


それが自分への罰だと思ったのかもしれない。


「俺と再会した頃、お母さんはすごく悩んでた。
最初は彼のために支えようと思っていたのに、日を追うごとにどんどん辛くなっていったらしい……

自分には愛情がないのがわかってるのに一緒に暮らすのはやっぱりきつかったみたいだよ?

だけどズルズル三年も暮らしてしまったのには理由があって、自分には愛情がなかったけど、ひな……お前には惜しみ無い愛情を注いでくれてたんだそうだ。

ひなにとってはすごくいい父親だったから、それを奪ってしまうのが可哀想でなかなか離れることが出来なかったらしい。

でもやっぱり奥さんの呪縛から逃れられなくて、あやは家を空けることが多くなった。

それからは彼のあやへの態度が冷たくなっていって、そんなとき俺と再会して、ずっと相談に乗ってたんだよ。

お父さんにも少しは原因があるわけだからね?

それにあややひなには幸せになってもらいたかったから、できるだけのことはしたかった」



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