夢の欠片
そう言われて思い出した。


確かに健と二人きりで夕飯を食べることが多かった気がする。


そういえば、私が寝てしまった後に、二人の言い争う声で目が覚めたことがあったような気がした。


お母さんは私のために我慢してくれていたんだ。


愛情がないってわかってるのに一緒に暮らすのは辛かったに違いない。


だって、私がそうだったから……


母からの愛情を感じられなくて、コロコロ変わる男の人からも、もちろんそんなものは感じられなかった。


いつも一人で自分はいらないんじゃないかって思ってた。


母もそんな思いをしてたんだろうか?


「一度、お父さんとお母さんが会ってるところを見られてしまってね

それがきっかけになってお母さんは彼を奥さんに返すことを決めたんだ。

お父さんは彼の家を出なくちゃならなくなったお前たちを放っておけなくて、一緒に暮らすことを提案した。

それでひなが小学生に上がった頃、一緒に住むことになったんだよ」


そんな経緯があったんだ。



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