夢の欠片
翔吾にヒントをもらって、私はまた中田の父のマンションに来ていた。
もうすっかり慣れた様子で、マンションのエレベーターに乗り込む。
4階に着くと、403の部屋を目指してゆっくりと歩いていった。
玄関のチャイムを鳴らそうと人差し指をボタンにかけた途端、私は少しだけ戸惑う。
中田の父は、健のことを教えてくれるだろうか?
複雑な関係だけに不安になる。
もし教えてくれたとしても、私が会いに行くことを快く思わないかもしれない。
しばらく玄関の前であれこれ考えていると、エレベーターの方から誰かが歩いてくるのがわかった。
「あれ?ひなちゃん!
こんにちは
遊びに来てくれたの?」
にっこり微笑んで私の来訪を喜んでくれたのは、父の再婚相手の愛未さんだった。
「愛未さん!
こっ、こんにちは!」
心の準備がないままに声をかけられて、私は動揺しながら挨拶をする。
そんな私を見て不思議そうな顔をしながら、愛未さんは玄関のドアを開けて、私に入るよう促した。
私は促されるまま部屋の中に入ると、辺りを見回してから愛未さんに問いかける。