夢の欠片



翔吾にヒントをもらって、私はまた中田の父のマンションに来ていた。


もうすっかり慣れた様子で、マンションのエレベーターに乗り込む。


4階に着くと、403の部屋を目指してゆっくりと歩いていった。


玄関のチャイムを鳴らそうと人差し指をボタンにかけた途端、私は少しだけ戸惑う。


中田の父は、健のことを教えてくれるだろうか?


複雑な関係だけに不安になる。


もし教えてくれたとしても、私が会いに行くことを快く思わないかもしれない。


しばらく玄関の前であれこれ考えていると、エレベーターの方から誰かが歩いてくるのがわかった。


「あれ?ひなちゃん!

こんにちは

遊びに来てくれたの?」


にっこり微笑んで私の来訪を喜んでくれたのは、父の再婚相手の愛未さんだった。


「愛未さん!

こっ、こんにちは!」


心の準備がないままに声をかけられて、私は動揺しながら挨拶をする。


そんな私を見て不思議そうな顔をしながら、愛未さんは玄関のドアを開けて、私に入るよう促した。


私は促されるまま部屋の中に入ると、辺りを見回してから愛未さんに問いかける。


< 126 / 289 >

この作品をシェア

pagetop