夢の欠片
てっきり父の方が愛未さんにアプローチしたんだと思っていた。


でも愛未さんの口振りだとどうも違うらしい。


「愛未さん?」


それっきり黙りこんでしまった愛未さんに私は遠慮がちに呼び掛けた。


彼女はハッとしたように私の顔を見る。


「ごっ……ごめんなさい!

ひなちゃんのことをお父さんが大事に思ってるってことを知ってもらいたかったの……」


いつもの愛未さんらしくない様子に、私は違和感を覚えてその思いを直接聞いてみた。


「愛未さん、お父さんと昔……何かあったんですか?」


聞かれたくないことを聞かれたというように、愛未さんはピクッと体を震わせて、ゆっくりと口を開いた


「お父さんとはね……

もうずいぶん昔からの付き合いになるの

私がお父さんの会社に新入社員として入った頃からだから、もう15年以上になるかな?」


愛未さんは遠い目をして、お父さんとのなれ初めを話し始めた。


< 131 / 289 >

この作品をシェア

pagetop