夢の欠片
私にとってそれが翔吾や舞さんだったように……


愛未さんにとってそれは父の存在だったんだ。


「私が家に着いた時、部屋の前に浩一さんがいたの……

たぶん、電話のやりとりで心配して来てくれたんだと思う

私はもう大丈夫だって言ったんだけど、信用してくれなくて……

また死のうとするんじゃないかって心配して、私を見張るためにしばらく一緒にいてくれたの」


そこまで話し終えると、愛未さんは涙を流していた。


私はなんとなくその涙の理由がわかった気がして、複雑な気持ちになる。


「ひなちゃん……

ごめんね?

あなたからお父さんを奪ったのは私なの!

その日、浩一さんはそのまま家に泊まってしまって……」


そんな話聞きたくなかった。


なんで愛未さんはわざわざそんなこと私に話すんだろう?


言わなければ分からないことなのに……


愛未さんのことも、笑顔の素敵な正直な人だって思っていられたのに……


大好きなままでいられたのに……


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