夢の欠片
「必ず来ますから

それに父は、二番目の父の居場所を知ってるかもしれない唯一の手がかりですから」


愛未さんを納得させるように、にっこり笑ってそう言いながら、私は彼女の手を両手でそっと包み込んだ。


そしてしっかり愛未さんの目を見つめると、もう一度言った。


「愛未さん、私は必ずまた父に会いに来ますから!

約束します!」


ようやく愛未さんはホッとしたような顔をして笑みを浮かべる。


「わかった……

ひなちゃん、ありがとう

待ってるから」


ようやく私は父のマンションから帰ってくることが出来たのだった。







思ったより遅くなっちゃったな……


マンションを出て、坂道を下りながらそう思う。


いくら日が延びたとはいえ、翔吾に心配かけないように、あまり遅い時間には帰らないようにしていた。


やっぱり美樹ちゃんのことがあったせいか、中学生の私が夜遅くまで帰ってこないことに抵抗があるらしい。


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