夢の欠片
「えっと……すみません

これから兄が迎えに来るのでちょっと……」


相手を刺激しないように、出来るだけ丁寧にお断りした。


そんなことで引き下がる相手じゃなさそうなのは分かっていたけれど……


案の定、少年たちの一人は私の腕を掴んでしつこく誘ってくる。


「えぇ、お兄ちゃんなんかほっといてさぁ

遊ぼうぜ?楽しいよ!」


やばい……


こんなとこ見られたら大変なことになると思った。


「あの、ほんとにもうすぐ来ちゃうんで、無理です!ごめんなさい!」


掴まれた腕を引っ張り返してそう言うと、少年たちはますますムキになる。


「なんで?いいじゃん!
お兄ちゃんなら大丈夫だって……イテッ!!」


その時、私をしつこく誘っていた男の頭にカコーンといい音をさせて、空き缶が当たった。


私はその飛んできた方向に視線を移す。


やっぱり……


視線の先にいたのは、思った通り翔吾だった。


自転車に跨がったままこちらを睨み付けているその顔は、鬼のような形相をしている。


だから早く諦めてほしかったのに……


私は目の前にいる少年たちが、少しだけ気の毒になった。


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