夢の欠片
実の母親からはそんな愛情を感じたことなどなかったけれど……


皮肉なもんだ。


「わぁ、美味しそう!
アップルパイ大好きです!
愛未さんが作ったんですか?
すごいですねぇ!

お店で売ってるやつみたい」


私が大袈裟に誉めると、愛未さんは恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに笑った。


その笑顔が太陽のようで、私は眩しく感じる。


私の今までの人生の中には、太陽のように眩しいことなんて一つもなかった。


どちらかといえば、月明かりのようなぼんやりとした陰鬱な印象しかない。


たった14年しか生きてないのにそんな印象しか持てないことが、私を無性に虚しくさせた。


でもだからこそ愛未さんの存在が有難いのかもしれない。


この二人といるだけで、私も太陽のように眩しい一員になれた気がするから……


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