夢の欠片
愛未さんだって、昔は私と同じように太陽の眩しさなんて知らなかったのかもしれない。


だけど父とこうして静かな愛情を育むことで幸せを感じているからこそ、自然とそれが身についたんじゃないだろうか?


だとすれば、私もいつかそんな日が来るのかもしれない。


私の笑顔で誰かを眩しく照らすことが出来るんだとしたら……


そして幸せを与えることが出来たとしたら……


それは自分にとっても、とても嬉しい瞬間に違いない。


だって人を幸せにするには、まず自分が幸せじゃなきゃ出来ないことなんだから……


「ひな?一つだけ言っておきたいことがあるんだけど……いいかな?」


アップルパイを頬張りながら、幸せについて考えていた私は、父に声をかけられてハッとする。


「うん、何?」


なんだろう?と首を傾げながら、私は父が口を開くのを待った。


「いずれわかることだから言っておくけど、二番目のお父さん……大沢さんは、あやと別れてから一年後くらいに、前の奥さんと復縁してるんだ」


――復縁?


前の奥さんと?


良かった……


私達が奪ってしまった時間は取り戻せないかもしれないけど、今はまた元の鞘に戻っているという事実が、私を安心させた。


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