夢の欠片
「花純美！」


女の子のお母さんが後から心配そうに駆け寄ってくる。


それから私に向き直って、「ありがとう」と礼を言った。


「いえ……」


お母さんが来たから大丈夫かな……と女の子から離れると、近くの水道でハンカチを濡らしてまた彼女たちの元に戻ってそれを差し出した。


「良かったらどうぞ」


お母さんは一瞬驚いたような顔をして、それからにっこり笑ってハンカチを受け取る。


「どうもありがとう！助かるわ」


そう言って女の子の膝をハンカチで拭った。


綺麗な人だなと思う。


多分……母と同じくらいの年齢なんだろうけど、可愛らしさの中に芯の強さみたいなものを感じた。


ボーッとそのお母さんに見とれていると、彼女が急に振り向いて私を見る。


ドキッとした。


自分の頭の中を覗かれたような気がして、なんだか恥ずかしくなる。


でも私の予想に反して、彼女は全く思ってもみない事を口にした。


「あの……ハンカチ汚しちゃったし、この子も傷の手当てするのに家に戻らなきゃならないから、あなたも一緒にどうかしら？

知らない人の家に上がるの不安かもしれないけど、この子もいるし怪しい者じゃないから安心して？」



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