夢の欠片
「俺だけじゃなくて、美樹のためにも、あいつが出来なかったいろんなことを、ひなには経験したり、楽しんだりしてほしいんだ……

ひなは楽しいことに背を向けて、自分は楽しんじゃいけないんだって思ってるように俺には見えるから……」


美樹ちゃんのため……


そう言われてしまうと何も言えなくなる。


翔吾の言うことは半分は当たっていた。


確かに自分ばっかり今更、普通の女の子になんかなれないって思ってるところもある。


だけど後の半分は能天気に親のスネをかじって、わがまま放題しているような子達と一緒にされたくないと思っている自分もいた。


お父さん達に会えたことで、自分の存在を認められるようにはなったけれど、まだ普通の子達と肩を並べて歩けるほど、自分の気持ちが追い付いていない。


ささくれだった心が、今やっと少しだけ平らになっただけで、元通りなるにはまだまだ時間がかかるだろう。


そんな私の思いを察したのか、翔吾はもう一度……今度は優しく諭すように言った。


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