夢の欠片
こんなに一生懸命自分のことを考えてくれた人が今までいただろうか?


私の幸せを願ってこんなに怒ってくれるなんて……


私は幸せ者だ……


二人の父親は私が辛い思いをしてきたことは理解しているとは思うけれど、本当の実態は知らない。


だから普通の中学生が普通にお父さんを探して訪ねてきただけだと思ってるだろう。


優しくもしてくれたし、私に会えたことも心から喜んでくれた。


だけどそこにはどこか他所の子供を可愛がるような、別の世界から来た相手をもてなすような、そんなしらじらしさを感じる。


でも、翔吾は違う……


そんなうわべだけじゃなくて、もっと深いところで私を本気で思ってくれてる。


そんな貴重な人は、どこを探しても翔吾以外にもう現れないだろう……


私より三年しか早く生まれてきてないのに、この人は私が想像できないくらい辛い経験をたくさんしてきたのかもしれない。


だからこそ私に間違ってほしくないと思ってるんだと、ようやく理解できた。


「わかった……

翔吾の言う通り、今の私に出来ること、中学生の私がやらなきゃいけないことを一生懸命やってみるよ」


私がそう言うと、翔吾は目を細めて嬉しそうに笑った。


まずは宿題か……


そう決心して、あと少しの翔吾との時間も大切に過ごしたいなと心の中でそっと思った。


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