夢の欠片



「じゃあ、行ってくるな?」


そう言って久しぶりの仕事に翔吾が出かけていく。


「行ってらっしゃい!
がんばってね!」


玄関まで見送ってそう言うと、翔吾はニカッと笑って手を振りながら玄関を後にした。


行っちゃった……


ここ数日、お盆休みだったため、寝ても覚めても翔吾と一緒だった。


別にどこに行ったわけでもないし、何をしたわけじゃない。


だけど翔吾と一緒に過ごせるだけで、幸せな気持ちになった。


休みの初日には翔吾に思いきりお説教されて少しだけへこんだけれど、それが自分のためを思って言ってくれてるんだと思えば、素直に聞く気持ちにもなれた。


私がそれを理解したことがわかると、翔吾はいつものように甘えさせてくれる。


その飴と鞭みたいな作戦に、私はまんまとはまってしまっているのかもしれない。


だけど翔吾の傍は本当に居心地が良すぎて、本音を言うと夏休みが終わってほしくない……


だけどそれを翔吾が望んでいないことは、明らかだった。


だから私は今のこの時間を大切にしたいと思う。


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