夢の欠片
私はこの家庭に爆弾を放り込んだような気持ちになりながらも、それ以上にこみ上げる健への気持ちが抑えられなかった。


「健……ずっと……ずっと会いたかった……」


自然と涙が溢れてこぼれ落ちる。


大好きだった健が今、目の前にいた。


「こっちにおいで?ひな」


私の背中を軽く押しながら、リビングに入るよう促される。


部屋に入った瞬間、幼い頃……ここで健と二人で夕飯を食べていた記憶が甦る。


当時とあまり変わらない部屋の雰囲気に、懐かしさを感じずにはいられなかった。


ソファーに座らされて、しばらく放心していると、健はお父さんと同じ質問をしてくる。


「お母さんは元気にしてる?」


そしてお父さんの時と同じように、私は返答に困った。


チラッとキッチンに立つ奥さんを見ると、花純美ちゃんの膝に消毒をしながら、絆創膏を貼ろうとしている。


私はそれを見てホッとすると、また健の方に目線を戻した。


そんな私の様子を見ていた健は、フッと笑って心配しなくていいよと言うように目で合図する。


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