夢の欠片
「ひなちゃん？

ほんとにまたゆっくり遊びに来てね？

一緒にランチでもしましょうよ」


今度は奥さんが、私を慈しむような暖かい笑みを浮かべてそう言ってくれる。


さっきまで感じていた奥さんへの罪悪感が、少しだけ和らいだ気がした。


もしかしたら、招かれざる客じゃないかと思っていたのは私の方だけで、彼女は私が思っているほど気にしていないのかもしれないと思い直す。


勝手に卑屈になって色眼鏡で見てしまうのは、私の悪い癖だ。


そう思って改めて健の家族一人一人に視線を送ると、さっきとは違って私を歓迎してくれてるように見えてくる。


「ありがとうございます

じゃあお言葉に甘えて今度またゆっくり遊びに来ていいですか？」


「喜んで！待ってるからな？」


「美味しいもの作ってまってるからね？」


健と奥さんが口々に私を待ってるって言ってくれたことが嬉しかった。


健と携帯番号を交換してから、奥さんにきちんとお礼を言う。


それから花純美ちゃんと健太くんに手を振って、私は大沢家を後にした。


< 181 / 289 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop